統計解析の中核を担う「仮説検定」。その結果を解釈するには、背後にある「仮定」の重要性を理解することが欠かせません。しかし、現実のデータは必ずしもその仮定を満たすわけではありません。
そんなとき、頼れる手法が「ノンパラメトリック検定」です。今回は、仮説検定に伴う仮定と、それが満たされない場合の対処法を解説します。
仮説検定における基本的な仮定
仮説検定の背後には、次のような仮定が設定されています:
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正規分布
データが正規分布に従っていることが前提とされる場合が多いです。例えば、スチューデントのt検定では、各群の母集団が正規分布であることを仮定します。 -
独立性
観測値が互いに独立している必要があります。たとえば、同一被験者から繰り返し測定されたデータでは、この仮定が成り立たない場合があります。 -
等分散性
各群の分散が等しいことが求められることがあります(例:スチューデントのt検定)。
これらの仮定が満たされているかどうかを確認せずに検定を行うと、結果が信頼できない可能性があります。
仮定が満たされない場合の問題
仮定が成り立たないデータに対してそのまま検定を行うと、第1種過誤や第2種過誤が増加するリスクがあります。例えば、正規分布から大きく外れたデータに対してt検定を適用すると、誤った結論を導く可能性が高まります。
論文(Rosner et al., 2016)でも、仮定が成り立たない状況での統計手法の選択の重要性が指摘されています。現実世界では、データが非正規分布を示すことが多く、特に少人数のサンプルでは正規性を満たすことが難しいケースが頻繁にあります。
ノンパラメトリック検定の登場
こうした問題を解決するために使えるのが「ノンパラメトリック検定」です。この手法は、正規分布などの特定の分布を仮定しないため、柔軟性があります。次回以降、以下のような具体的な検定を紹介します:
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ウィルコクソンの符号順位検定
対応のあるデータの検定に利用されます。例えば、リハビリ前後の患者の歩数変化を評価する場合 -
マン・ホイットニーのU検定
対応のない2群間の比較に使われます。サルコペニアの有無による歩行速度の違いを調べる場合
実務に生かすための第一歩
次回の記事では、ウィルコクソン検定とマン・ホイットニーU検定について解説します。仮定を気にせずに使える手法ですが、その特性や限界も理解しておくことが重要です。
最後に一つのポイント:
統計解析を行う前に、まずデータの分布を確認し、仮定が成り立っているかを検討することを忘れないでください!